ソウルに戻るその日、ハオは寝坊してしまった。
周りが暗かったので夜明けだと思ったのだが、カーテンが閉まっていたせいだと後でわかった。ハンビンはどこかへ出て行ったのか見当たらなかった。
時間を確認しようとベッドの上とサイドテーブルを探すと、メガネがないことに気が付いた。 いつから眼鏡をかけていなかったのだろう。
海に入った後、そのままホテルに戻ったのですっかり忘れていた。おそらく今頃、海のどこかをさまよっているだろう。慌てて体を起こすと、自分がほとんど裸であることに気づいた。バスローブが緩く開き、裸と同じような状態だった。慌てて紐を結んで周囲を見回した。誰もいないのに意味もなく頬が赤くなった。
昨夜のことがフィルムのように脳裏をよぎった。ジョンヒョンの告白とキス、ハンビンを追いかけて問い詰めたこと、二人で海へ転げ落ちたこと、シャワーから降り注ぐ水流に当たって... そしてソンハンビンと犯したことまですべて。
酔っ払うと前日のことをすっかり忘れてしまうことも多いらしいが、心臓が悪い代わりに無駄に健康な脳を持っているようだ。
蒸し暑い風呂場での出来事がここまで鮮明に思い浮かぶとは。思い出すだけで顔が熱くなるような刺激的なシーンが目の前に広がる。ハオは頭を抱え、腰を落としてうんうんと唸った。
どうしよう。死にたい、なんで起きてしまったんだ、もう一生眠ったままでいるほうが世の中のためになったのに….
「起きた? 頭が痛そうにしてたから薬を買ってきたよ。」
布団に頭を埋めて苦痛に悶絶していると、優しい声が聞こえてきた。一人で考え込んでいたため入ってくる音も聞こえなかった。顔を上げられないハオの隣に薬箱を置いたハンビンが冷蔵庫を開けてペットボトルの水を取り出す音が聞こえた。
「薬飲んで外に出て昼ごはんを食べよう。探してみるよ。」
何気なく言う言葉に勇気付けられ、そっと頭を上げた。慎重に視線を上げると、こちらを見下ろすハンビンが見えた。口元に浮かぶ小さな笑顔は、何事もなかったかのように穏やかだった。
喧嘩したことも、怒ったことも、キスしたことも、それ以上のことをしたことも、全てなかったようだ...